第5回One Bridge semina セミナーが開催されました

Event Date: 11.9.2020

 

2020年度第5回One Bridge セミナーがZoomのwebミーティングにて開催されました。今回はOECD(経済協力開発機構)東京センター所長、村上由美子氏を講師にお招きし”Why does diversity matter to you?” と題してお話をいただきました。村上氏は、上智大学を卒業後スタンフォード大学大学院で国際関係学を学び、国際連合に就職されます。バルバドス、ニューヨークの国連事務局、カンボジアでの勤務を経て一旦退職し、ハーバード大学大学院でMBAを取得、その後はゴールドマン・サックス証券で15年間活躍され、クレディスイス証券を経て2013年より現職です。国連から外資系民間企業へ転職、そして競争の激しい外資系金融機関での20年の経験と専門知識を生かし、国際貢献の舞台に再び戻ってこられたという大変ユニークな経歴をお持ちです。

「私の働き方やキャリアは当時の日本人女性としては大変珍しかったが、約30年後輩となる大学生の皆さんにとっては日本でも珍しくない働き方になると思う。日本企業も劇的に変化しており、終身雇用ももはや過去のもの。これからは自分の強みを自ら売りこみ、やりたい仕事をやっていく時代。キャリアパスは自分で切り拓くもの。30年前とは全く違ったエキサイティングな時代ともいえるでしょう。」

キャリアの紹介後、世界のメガトレンドとして次の3つを挙げ(1:職場を変えるテクノロジー、2:世界的に統合されている市場、3:人口の高齢化)関連する様々なデータを見ていきました。

日本の高齢化については、年齢別人口比率のデータでも明らかですが、村上氏によると悲観的に捉える必要はないとのこと。データによると、例えば、スペインやまだ問題が顕著化していないように見える韓国や中国も、すぐに超高齢化を迎えることが分かります。逆に一歩先に高齢化に直面する日本がよい対応策を見つけられれば、ここに全世界を市場とした大きなビジネスチャンスがあると言えるからです。

実際に、先見の明があった村上氏のお母様は‘90年代、ほぼ子育てが終わった40代後半に、成人用おむつ等を扱うドラッグストアをスタート、子育てや介護の経験を生かして、年商2億、中国地方最大のドラッグストアビジネスを成功させたというエピソードも紹介されました。
またデータより問題点も浮かび上がりました。例えば、日本の生活水準と生産性。非正規雇用や高齢者の雇用によって、日本人の平均労働時間は減ったが、労働生産性も低い。結果として一人当たりのGDPはOECD諸国の平均値を大きく下回るそうです。

様々な現状も再確認出来ました。テクノロジーの進化が大きく仕事を変えると言われるが、実際仕事のオートメーション化は10%、実際に大きく変わるのは仕事の仕方や内容で、これにより今後減る傾向なのは中レベルのスキルを持つ労働者の仕事だということです。
また若年層の高い失業率は、ヨーロッパでは深刻な社会問題ですが、日本には当てはまりません。日本はこの点では特異な国で、ここにオートメーション化にスムーズに対応できる可能性とビジネスチャンスがあります。

国際成人力調査によると、日本人の読解力・数的思考力はともに世界のトップであり、これもテクノロジー化に向けた利点と言えます。全国民的に基礎学力が高い日本人は再教育、再研修がしやすい。特に中年層の能力が高く、女性の能力が高く、特に女性は集団での問題解決能力が高いというデータ紹介もありました。問題はリーダー的ポジションについている女性が少なすぎること。日本は男女間賃金格差が25%と最も大きい国のひとつで、この男女間格差解消により日本の経済規模は約2倍に拡大するというデータがあるそうです。

他の問題点としては、仕事における情報処理・活用に関するスキルの使用の少なさ。能力的に優れる日本人に足りない自信と意欲。過剰学歴の現状。また特許の所有率が高いがビジネスに結びついていない現状。安定した社会に、能力、技術、資金、特許数等が揃っていても各企業や各大学にあるだけで交わらない。これらが化学反応をおこして理想のイノベーションがうまれるにはマインドセットが必要だそうです。

また、リーダーに求められる資質も、25年前とは変わっているという興味深いお話もありました。以前はリーダーと言えば、先頭に立って人を率い明確な方向性を示して突き進むイメージだったが、最近は、先頭に立たず「ゆるやかに方向性を示す力」でメンバーを見守るのが主流だそう。テクノロジーの進化や変化の激しい新しい時代には、何が正解か誰もわからないことも多い。異なるタイプの者が様々な角度より物事を捉えた方が良いという考えに基づくもので、少し離れて後ろで行動を見守る手法が、今の時代には合っているそうです。

先入観の問題に関しては、ニューヨークフィルハーモニー楽団の団員の例が挙げられました。’70年代は白人男性中心だった団員構成ですが、‘80年代にブラインドオーディション(性別や人種を伏せたオーディション形式)を採用してから一転、現在では男女比もほぼ半々で、多くのアジア人が含まれるそうです。これは無意識の先入観を示す例であり、今一度自分自身に問いかける必要があるとのことでした。

最後にグラスに半分水が入っている写真と共に「Is the glass half empty or half full?」の意味について考えました。これは有名な質問で、水が半分も入っているか半分しか入っていないか、どう捉えるかにより楽観主義か?悲観主義か?というものですが、実はその議論よりも、グラスに水が入っているという事実に目を向けることが大切だということでした。
Q&Aでは、再教育について大学の果たすべき役割は?の他、学生時代はどのような学生だったか?成功の秘訣や日々のモチベーションは?ライフゴールとは?現状に満足することはあるか?どの様な時に幸せを感じるか?等々哲学的な質問を含め、村上氏のキャリアにまつわるものが多く飛び出しました。

「学生時代や若いうちには、何か新しいことにチャレンジしてみるとよい。何が自分の持つ偏見なのかさえ実は分からないもの。コンフォートゾーンから出て新しいことを今やってみるべきである。チャレンジは年を取るにつれ難しくなるし、今ならできます。」村上氏のコメントは国際機関や投資会社への就職を志す学生だけでなく参加者それぞれに響くものとなりました。