2021年度第3回One Bridgeセミナーが開催されました

Event Date: 10.25.2021

2021年度第3回One Bridge セミナーがZoomのwebミーティングにて開催されました。今回は東京工業大学リベラルアーツ研究教育院の准教授 治部れんげ氏を講師にお招きし「リーダーシップとジェンダー平等」と題してお話をいただきました。

治部さんは一橋大学法学部の卒業生で、フリージャーナリスト7年、経済系出版社の雑誌記者16年、さらにアメリカ留学を経て一橋大学大学院で経営学修士課程を修了された大先輩です。

セミナーは、渋沢栄一の「論語と算盤」は読みましたか?と言う問いかけよりスタートしました。日本の資本主義の父と言われる渋沢は、この中で「道徳(論語)と経済(算盤)は長期的には一致する」つまり、社会にとって良いこと=利益が上がる、と説いていました。当時の日本は家父長制や男尊女卑が当たり前であった時代、彼はその頃すでに「女性を馬鹿にしたような扱いをしてよいのだろうか」とジェンダー問題にも言及していました。「女性も教育を受けて社会活動に参加することで有益な働きをする人が倍になる」との主張は、近年世界各国がジェンダー平等を進める根拠と一致、つまり渋沢の発想は時代を100年先取りしていたとのことでした。

このように「真のリーダー」とは、時代の制約、法律・社会規範等から「当たり前」とされるもの超えて、社会のあるべき姿を見ることが出来る者なのだというお話でした。

次に日本の男女格差について考えました。今年の「ジェンダーギャップ指数ランキング」で日本は156か国中120位、主要7カ国(G7)中では最下位でした。これは「ダボス会議」を主催する「世界経済フォーラム」による調査で、各国の男女格差を、政治、経済、健康、教育の4分野で見ています。日本は政治:147位、経済:117位、健康:65位、教育:92位、健康と教育の分野の評価に比べ、政治と経済の分野での評価が低い結果となっています。

健康分野では出生児の男女比(1位)や健康寿命(72位)の高さ、教育分野では識字率(1位)などにより順位が上がるとのことでした。政治分野では国会議員や大臣に女性が少ないこと、また女性首相が国を率いた期間なし、などの理由で順位が下がるそうです。経済分野では、労働参加率の男女比、賃金格差、上級管理職、専門職/技術職での男女比率などが指標ですが、日本の女性管理職の割合は15%、これは他国の半分以下の数字だそうです。

治部さんは、日本企業に女性リーダーが少ないのは、ある世代まで女性をきちんと採用していなかっ

たからだろうと25年前のご自分の就活を振り返りました。当時は女性=事務職(一般職)、男性=営業・企画(総合職)など、女性差別的な採用慣行がまだまだ残っていたそうです。結局は正社員の記者となり実力や成果で評価された治部さんですが、同世代の優秀な女性でも職に恵まれない方が多くいたそうです。

次に、参加者が今までに感じた男女の不平等の経験について話し合いました。
男子学生からは、小中高を通じて、女子は着替えが更衣室なのに男子は廊下だった等、男子ゆえに雑に扱われた例があげられました。

女子学生からは、女子だからそんなに良い大学に行かなくてもよいと言われた経験、中学・高校受験の際に男女別の定員のため、男女で合格最低点に差があったなどの体験談があがり、タイムリーな情報として都立高校の男女別定員が廃止に向けて動き出しているという情報とつながりました。

他大学での調査結果からは、重労働や汚れる作業は男子だけの担当だった、男子だからと理系への進学、より就職しやすい分野への進学を期待される=将来稼ぐのは男というプレッシャーという意見、さらに、デート等で計画や支払いが当然の雰囲気、かわいい色や女性向けの物を好むと揶揄される、など男性意見が紹介されました。

女性意見は、兄妹で女子だけが家事をさせられた、理系学部の女子比率が低い、実験器具など男性サイズで作ってある、女性は危ないので夜早く帰宅するように言われる等がありました。

こうして見るとジェンダーバイアスは無意識なもの、悪気ない言動が多いという事も分かり、対応としても特に何も言わない、しないという意見がほとんどでした。

しかし意思決定への影響をみると昔と今では違いがみられるそうです。最近の学生に「仕事か仕事以外かどちらを優先させたいか」聞くと、「仕事以外優先」という回答が男女ともに半数以上、この変化に雇用主側も動きを見せているそうです。優秀な人材が意思を表明することは企業にもよいシグナルにもなるため、「ぜひ雇用主と働き方について交渉・相談してほしい」と治部さんからは提案がありました。コロナ前後でリモートワークの拡大もあり、転居を伴う転勤を廃止する企業も出ています。配偶者の転勤の際の選択肢も増えるなど、柔軟な対応が可能となってきているようです。

最後に、まだ課題の残る日本の現状についても紹介がありました。男女共同参画白書によると、日本男性の家事育児時間は欧米諸国に比べてかなり少ないのが実状です。特に大都市近郊では、男性の長時間労働→家庭参加不可→女性が家事育児担当→仕事に時間をさけない→昇進しない→就労意欲喪失→女性の離職→男性の長時間労働…の悪循環問題が残っているとのこと。社会のジェンダーギャップと家庭内のジェンダー不平等問題は密接に結びついているとの指摘もありました。

今は育児・介護休業法で男性も育児休業が取れ、男性育児白書によると直近の利用率は13%、国家公務員では50%だそうです。しかし世代間の意識ギャップが残るのも事実で、例えば就活層と経営者層で、ライフワークバランスや男性育休への賛成についても差があるそうです。働く女性の出産・育児・介護には協力的でも、働く男性のついては同様な配慮やサポートが難しいなど、まだ残る無意識バイアスの例も挙げられました。

治部さんは男性育休を推進する企業の経営者との対談の際、ビジネスリーダーのあるべき姿を見たとコメントされました。積水ハウスの社長さんは男女平等が進むスウェーデンへ出張の際、男性の育児参加の光景を見て、帰国後すぐに男性社員の育休取得1か月間という制度改革に着手したそうです。このように、同じ現実を見ても、問題に気づき、実現したいビジョンを描き、実行できるかというのが経営者に求められる資質で

ある、真のリーダーとはいつの時代も「当たり前」を超えて社会のあるべき姿を見ることが出来る者であるということでした。

2019年に開催されたG20の大阪首脳宣言では「女性のエンパワーメント」の項目で「ジェンダーに関する固定観念の排除」と明記されています。世界は女性とジェンダー問題を認識し男女平等の必要性を強く感じているとのことです。

Q&Aセッションでは、ジェンダー問題に興味を持ったきっかけは?日本の性教育の遅れについてどう思うか?中高年のジェンダーバイアスへのよい対処法は?選択制夫婦別姓についてどう思うか?について話があがりました。

ジェンダー問題は人権問題であると共に経済問題でもあり、2015年のSDGs採択をきっかけとして昔より議論しやすいテーマともなりました。政府は若い人の意見を求めているので、パブリックコメントとして発信するなど、ぜひ政策や法律の策定に関与してください、とのコメントでセミナーはしめくくられました。